法人税は事業活動で利益が生じた場合に課される国税で、概要や他の国税との違いを理解しておくことで、仕組みや会計利益との違いも把握できます。法人税は中小企業と大企業で計算方法が異なり、税額控除や優遇制度の活用有無も違いがあります。
しかし、「法人税と所得税の違いって何?」「法人税はいつまでの納付すればいいの?」といった疑問が出てくるでしょう。
そこで本記事では、法人税の概要や他の国税との違い、種類と通常法人税や地方法人税の仕組みを解説します。法人税の計算方法と税率の仕組み、申告期限と納付期限の基本ルール、延滞した際のペナルティも解説するため、気になる人はぜひ参考にしてください。

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法人税は法人利益に課される代表的な国税
法人税は企業活動によって得られる利益の「所得」に対して課される国税です。個人が一年間の所得に対して所得税を納めるとおり、法人は会計期間ごとに得た所得に対して法人税を納める義務があります。国の重要な財源の一つとして、公共サービスや社会保障制度などを支えるために使われています。
法人税は法人の規模や種類に関わらず、利益が赤字であれば基本的に課税されない「応能負担」の原則に基づいています。利益が多ければ多いほど税負担は増え、利益が少なければ負担も軽くなります。
ただし、利益がない赤字であっても、資本金の額や従業員数に応じて課される地方税である「法人住民税」の均等割は支払う必要があります。法人税の税率は、法人の種類や資本金の額、所得の金額によって異なります。例えば、中小企業に対しては、所得の一部に軽減税率が適用されるなど、政策的な配慮がなされています。法人税は単に利益に課税するだけでなく、企業の成長を促進したり、経済政策のツールとして活用されたりする側面も持っています。
ここでは、法人税の仕組みと所得税の違い、法人税が課される法人と課税されない法人について解説します。
法人税の仕組みと所得税との違いを理解する
法人税と所得税は、どちらも所得に対して課される税金ですが、対象や仕組みに違いがあります。特徴的な違いとして、納税義務者が挙げられます。法人税が株式会社や合同会社といった「法人」の所得に課されるのに対し、所得税は「個人」の所得に課される税金です。会社員が得る給与や個人事業主が事業で得た利益は所得税の対象となります。
また、課税される所得の範囲も異なります。法人税は法人が事業活動全体から得たすべての所得が課税対象です。一方、所得税は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得など、所得の種類が10種類に区分されており、それぞれの性質に応じて所得の計算方法が定められています。
さらに、税率の設定方法についても違いがあり、法人税は基本的に比例税率であり、所得金額に対して一定の税率が適用されます。一方、所得税は所得が多いほど税率が高くなる「超過累進税率」が採用されています。そのため、法人税と所得税は担税者や課税対象、税率構造において根本的な違いがあり、それぞれの役割を担っています。
法人税が課される法人と課税されない法人
法人税は原則すべての法人に課税され、事業者の性質や目的によって取扱いが異なります。法人は以下の4つに分類され、それぞれ課税の範囲が定められています。
- 普通法人
- 公益法人
- 協同組合
- 人格のない社団等
株式会社や合同会社などが代表的な「普通法人」は、事業活動から所得が課税対象となります。一方、「公益法人」の代表的な一般社団法人やNPO法人などは、税制上の優遇措置が適応されており、会費や寄付金などの収益事業以外の所得は、法人税が課税されません。ただし、物品販売や不動産賃貸など、株式会社と同様の収益事業を行って得た所得は課税対象となります。
また、農業協同組合や消費生活協同組合などの「協同組合」は、組合員の相互扶助を目的としているため、普通法人よりも低い軽減税率が適用されます。法人税の課税対象は法人の種類によって異なるため、あらかじめ認識しておきましょう。
法人税の種類と通常法人税や地方法人税の仕組み
法人税は複数の税金で構成されており、法人の所得に対して国が課税する「通常法人税」が代表的です。一方、地方交付税の財源として地域間の税収格差を是正するため活用される「地方法人税」が存在します。地方法人税として国が一旦徴収した後、各地方自治体に再分配される仕組みです。
さらに、前述した税金に加えて法人は事業所を置く都道府県や市町村に対して法人住民税や法人事業税などの地方税も納付義務があります。法人が納める税金は、国税と地方税の2種類が存在しており、それぞれの税金は目的が異なります。
ここでは、法人税の種類、通常法人税や地方法人税の仕組みについて解説します。
事業年度の所得に課される通常の法人税
各事業年度の所得に対して課される国税が通常の法人税です。一般的に法人税と言われるケースの多い国税で、法人税法に基づき、会計上の収益である益金から、費用の損金を差し引いて算出します。益金と損金の範囲は税法で細かく規定されており、会計上は費用として認められても、税法上は損金として扱われない損金不算入項目などが存在し、税務調整の手続きが必要となります。税率は法人の種類や規模によって異なり、資本金1億円以下の中小法人の場合、所得金額のうち年800万円以下の部分については、大企業よりも低い軽減税率が適用される措置が設定されています。
大企業に比べて体力的に劣る中小企業の税負担を軽減し、成長を支援する政策的な意図があります。法人は事業年度が終了した日の翌日から原則2ヶ月以内に法人税額を計算して確定申告を行い納税が必要です。
退職年金積立金に対して課される特別法人税
特別法人税は企業の利益ではなく、企業が従業員のために積み立てている年金資産、厚生年金基金や確定給付企業年金などの退職年金積立金に対して課される税金です。年金資産の運用によって得られる利益が非課税のまま無期限に繰り延べられるリスクを防いでおり、年金資産は本来、将来の給付原資となるため、運用益は課税が繰り延べられているとされています。
特別法人税の税率は退職年金積立金額に対して1.173%と定められていましたが、バブル経済崩壊後の長期的な経済低迷や低金利の状況下で、企業年金の運用環境が悪化し、企業の年金制度維持の大きな負担となりました。そのため、企業の負担を軽減し、年金制度の安定を図る目的で、1999年度から現在まで課税が凍結されています。現在は特別法人税が実際に徴収されることはなく、税法上は制度として存在しているため、将来の経済状況によっては課税が再開される可能性もあるでしょう。
地方法人税や外形標準課税など関連する税金
国税には法人税以外に地方法人税や外形標準課税などの関連する税金が存在します。地方法人税とは、法人税額を基準に課税される国税です。地方交付税の財源とされており、財政力の弱い地方自治体に再分配し地域間の行政サービス水準の格差を是正する役割があります。
地方税の一つである法人事業税は、資本金1億円超の法人を対象とする外形標準課税と呼ばれる仕組みがあります。従業員の給与総額や支払利子などを合計した付加価値割と、資本金の額を基準とする資本割によっても税額が計算される制度です。
赤字で所得がない企業でも、事業規模に応じた一定の税負担が生じることになります。応益原則に基づき、法人が受ける行政サービスに対し、規模に応じて公平に負担を求めています。法人には所得や資本金に応じて法人住民税も納付する必要があり、複数の税金が一体化し、税負担を構成していると言えるでしょう。
法人税が課される課税所得の範囲と計算の基本
法人税は法人が事業活動を通じて得た利益に対して課されており、計算の基礎は利益ではなく、課税所得です。課税所得とは、法人の収益の益金から、費用にあたる損金を差し引いた金額を指します。益金と損金は、法人税法で詳細に定義が定められており、企業会計における収益や費用と完全一致するわけではありません。
例えば、会計上は費用として処理されていても、税法上は損金として認められない損金不算入項目が存在します。法人は決算で確定した会計上の利益を基に、税法独自のルールに従って税務調整を行い、課税所得を正確に算出する必要があります。
法人税法に基づいて算出した課税所得に、定められた法人税率を乗じることで、納付が必要な法人税額が確定します。法人税額の算出は企業の規模や業種に関わらず、すべての法人が事業年度ごとに必ず行うべき重要な手続きのため、
ここでは、課税所得の仕組みと会計利益との違いを解説します。
課税所得の仕組みと会計利益との違いを押さえる
法人税の課税所得は、企業が決算書で報告する会計上の利益である税引前当期純利益とは異なります。会計は株主や投資家などの利害関係者に対して、企業の財政状態や経営成績を正しく報告することを目的としています。一方、税務は税法に基づいて公平な課税を実現を目的としています。具体的には、会計上の利益に税法特有の調整を加えて課税所得を算出します。金額を調整を税務調整と呼び、申告調整とも言われます。
税務調整には、会計上の費用を税法上の損金として認めない加算調整と、会計上の収益を税法上の益金として扱わない減算調整などが挙げられます。例えば、役員賞与の一部や交際費の限度超過額は、会計上は費用ですが、税務上は損金と認められないため、利益に加算されます。会計利益と課税所得の差異を正しく理解し、適切な税務調整を行うことで適切な法人税申告が実現します。
税務調整で注意が必要な代表的な項目とは
課税所得を算出する税務調整には、日常的な経理処理において重要なポイントが存在します。加算調整の代表例が役員給与です。役員給与は、定期同額給与や事前確定届出給与など、税法で定められた要件を満たさない限り、損金として算入できません。
また、交際費も、原則として損金不算入とされており、資本金の規模に応じて定められた限度額を超えた部分が加算調整の対象となります。さらに、法人税や法人住民税などの租税公課も、会計上は費用ですが税務上は損金とならないため加算が必要です。
一方、減算調整の代表例として受取配当等の益金不算入が挙げられます。他の法人から受け取った配当金は、既に配当元の法人で課税済みのため、二重課税を避ける目的で、一定額が益金に算入されない仕組みになっています。過去の事業年度で生じた赤字である繰越欠損金を当期の所得から控除する場合も、減算調整を行います。税額に直接的な影響を与えるため、取り扱う際は注意が必要です。
交際費の扱いと法人税計算上の制限
交際費は得意先や仕入先など、事業に関係のある者に対する接待や贈答のために支出する費用を指します。税務上の取扱いには厳しい制限が設けられており、交際費が企業の利益を圧縮し、不必要な支出を助長する可能性があるため、課税の公平性を保つ観点から規制されています。例えば、交際費は原則として損金に算入ができませんが、企業の円滑な事業活動を維持するため、一定の政策的配慮から、法人の規模に応じて損金算入の限度額が特例として定められています。期末の資本金の額が1億円以下の中小法人の場合「年間800万円までの全額」または「接待飲食費の50%」のいずれか有利な方を選択して損金に算入が可能です。
一方、資本金が100億円以上の大企業では、接待飲食費の50%のみが損金算入の対象となります。一人当たり5,000円以下の飲食費で、所定の事項を記載した書類を保存している場合は、交際費から除外して全額を損金算入が可能です。実務上は支出の内容を正確に把握し、適切な勘定科目で処理する必要があるでしょう。
寄附金の損金算入限度額に関する規定
法人が支出する寄附金は、社会貢献活動の一環として重要な役割を果たし、法人税法上で損金算入に一定の制限が設けられています。寄附金が事業に直接的な関連を持たない支出のため、無制限に損金を認めると租税負担の公平性が損なわれる恐れがあるためです。寄附金の損金算入限度額は、寄附の対象によって計算方法が異なります。国や地方公共団体への寄附金、財務大臣が指定する特定の公益増進法人への寄附金は指定寄附金と呼ばれており、原則全額を損金に算入が認められています。
一方、一般の神社や寺院、政治団体、業界団体などへの寄附金となる一般寄附金については、法人の資本金の額と所得の金額を基に計算される一定の限度額までしか損金として認められません。限度額を超える部分の金額は、損金不算入として課税所得に加算されます。法人が寄附を行う際は、寄附先がどの区分に該当するのかを事前に確認し、損金算入限度額を意識して税務処理を行いましょう。
減価償却費の会計と税務の違いについて
減価償却は、建物や機械、車両などの高額な固定資産の取得価額を、資産が使用可能な期間である耐用年数にわたって分割し、費用として計上する手続きです。減価償却費の計算は会計と税務では考え方に違いがあります。会計上の減価償却は、企業の任意性が比較的広く認められており、経営の実態に合わせて償却方法や耐用年数を柔軟に設定が可能です。企業の財政状態を適正に表示を目的としています。
一方、税務上の減価償却は、課税の公平性を確保する観点から、法人税法で定められたルールに従って算出が必要です。償却方法には定額法や定率法などが存在し、資産の種類ごとに定められた法定耐用年数を用いて、損金として算入できる減価償却費の限度額を算出します。
企業が会計上で計上した減価償却費が、税務上の限度額を超えている場合、超過額は損金不算入となり、課税所得に加算する方法を減価償却超過額と呼びます。会計上の償却費が税務上の限度額に満たない場合は、差額を将来の年度に繰り越せます。
法人税の計算方法と税率の仕組みをわかりやすく解説
法人税は企業が得た利益に対して課される税金で、仕組みを正しく理解すれば、経営管理にも大きく役立ちます。基本的な流れとして会社の売上から経費を差し引いた利益を計算し、損金算入できる費用や特別控除を反映して課税所得を求めます。課税所得に法人税率を掛け合わせることで法人税額が算出されます。
法人税は一律の税率ではなく、企業の規模や所得金額によって適用される税率が異なるため、算出時は注意が必要です。
特に資本金の額や所得金額に応じて中小企業向けの軽減税率が設けられているため、自社の状況に合わせた計算が必要です。
また、法人税単体ではなく、住民税や事業税といった他の税金も合わせて負担するため、実際の納税額は想定以上に大きくなるケースも少なくありません。正確な金額や算出方法に対して理解がないと、資金繰りの計画にずれが生じるリスクもあります。
ここでは、法人税の計算方法と税率の仕組みをわかりやすく解説します。
中小企業と大企業では法人税率が大きく異なる
法人税率は企業規模によって異なり、中小企業には軽減措置が設けられています。例えば、資本金1億円以下の中小企業では、課税所得800万円以下の部分に15%(本則19%)の軽減税率が適用されます。そのため、同じ利益を上げても大企業に比べ税負担が軽くなる仕組みです。
一方、大企業の場合は、軽減措置の対象外となるため、標準的な法人税率が全面的に適用されます。大企業は税率が高めに設定される傾向にあり、中小企業の成長を支援し、経営基盤を安定させるための政策的な配慮と言えます。しかし、資本金や組織形態の変化に伴い税率が変わるため、企業は規模の拡大に伴う税負担の増加を見越した経営戦略を立てる必要があります。特に中小企業から大企業へと成長する過程では、税負担の変化がキャッシュフローに大きく影響するため注意が必要です。
実効税率は住民税や事業税を含めて考える必要
法人税の計算では実効税率の考え方が重要です。法人税率だけを見て納税額をイメージすると実際との差が発生するケースが多いです。法人が負担するのは法人税だけではなく、法人住民税や法人事業税など複数の税金が加わるためです。法人住民税は、都道府県や市町村に納める税金で、法人税額に対して一定割合で課される仕組みです。
また、法人事業税は利益に応じて課税され、外形標準課税と呼ばれる仕組みが導入されているため、大企業では資本金や付加価値額なども課税対象になります。合算した実効税率は、一般的に法人税率だけを見た数値よりも高くなります。例えば、法人税率が23.2%であっても、住民税や事業税を含めると実効税率は30%を超えるケースも珍しくありません。経営者が税負担を正しく把握するためには法人税単体ではなく、すべての関連税を含めた実効税率を基準に考える必要があるでしょう。
税額控除や優遇制度を活用して税負担を軽減
企業の税負担は大きな経営課題の一つで、税額控除や優遇制度を活用すれば大きく軽減が可能です。代表的な例として、研究開発費税制が挙げられます。研究開発にかけた費用の一定割合を法人税額から控除できる仕組みで、技術革新を進める企業にとって大きなメリットです。
また、中小企業投資促進税制などの制度では、生産性向上に資する設備投資を行った場合に特別償却や税額控除が認められ、資金繰りの安定化に寄与します。さらに、地域活性化や環境対策を目的とした優遇措置も多く、再生可能エネルギー設備の導入などでも減税効果を得られる場合があります。これらの制度は単に税金を減らすだけでなく、企業の成長戦略や社会的な取り組みと結び付けることで、長期的なメリットを生み出せます。ただし、それぞれ適用条件が細かく定められているため、専門家の助言やサポートを受けながら計画的な利用が望ましいです。税務戦略を立てる上で、単なる節税対策にとどまらず、経営方針と調整した優遇制度を活かす必要があるでしょう。
法人税の申告期限と納付期限の基本ルールを解説
法人税の申告と納付には明確な期限が定められており、設定内容を守らないと加算税や延滞税といったペナルティが発生します。基本的に法人税の確定申告書は、事業年度の終了日から2か月以内に提出し、同時に税額を納付する必要があります。
例えば、3月決算の企業なら、5月末までに申告と納付を完了させなければなりません。また、法人税は1年に一度の確定申告だけでなく、中間申告や予定納税といった制度もあり、企業の収益状況に応じて複数回の納税が求められるケースもあります。期限を過ぎてしまうと、延滞税が日数に応じて課されるため、資金繰りに予期せぬ影響を与えかねません。
そのため、法人税のスケジュールは経理担当者や経営者が常に把握が重要です。特に年度末は決算業務や申告準備が重なるため、余裕を持ったスケジュール管理を行うことでスムーズな対応が可能になります。
ここでは、法人税の申告期限と納付期限の基本ルールを解説します。
確定申告と中間申告のスケジュールを理解する
法人税には確定申告と中間申告と呼ばれる2つの申告形態があり、それぞれのスケジュールを正しく理解する必要があります。確定申告は事業年度の最終的な利益を確定させ、税額を申告・納付するもので、事業年度終了から2か月以内が期限です。一方、中間申告は前事業年度の税額に基づき、あらかじめ法人税を納める仕組みで、通常は事業年度開始から6か月を経過した時点で行います。
中間申告の方法は大きく分けて2種類あり、前年度の法人税額を基準に計算する「予定申告方式」と、6か月間の利益状況に基づいて算出する「仮決算方式」があります。中間申告を正しく行うことで、年度末に大きな納税額が集中するリスクを避け、資金繰りの安定にもつながります。スケジュール管理を怠ると、期日直前に慌てて対応を迫られることになり、経理業務全体に負担を与えます。そのため、年間を通じて法人税のスケジュールを管理する体制を整えておきましょう。
法人税の納付方法は複数あり利便性が高まっている
法人税の納付方法は多様化しており、企業の状況に応じて選べるようになっています。従来は金融機関の窓口で現金納付する方法が主流でしたが、現在は電子納税や振替納税、クレジットカード納付などさまざまな手段が用意されており、納付の利便性は大幅に向上しています。
例えば、インターネットバンキングを活用した電子納税であれば、自社のオフィスにいながら納税を完了でき、業務の効率化に役立てられます。
また、口座振替による納税方法を利用すれば、納期限に自動的に引き落とされるため、納付忘れを防ぐことができます。さらに、クレジットカードを利用した納税では、決済によるポイント還元などのメリットも享受できるケースがあります。ただし、それぞれの方法には手数料や利用条件が設けられているため、自社にとって最適な方法を選択が重要です。
クレジットカードによる法人税の納付方法
法人税はクレジットカードを利用して納付も可能です。国税庁が提供する「国税クレジットカードお支払サイト」を通じて手続きができ、インターネット環境があれば場所を選ばずに納付できます。クレジットカード納付の大きなメリットは、納期限ギリギリでも即時に支払いが完了する点やカード会社のポイントが付与される点です。
また、カード利用により実質的な支払猶予を得られる場合もあり、資金繰りに柔軟性を持たせられます。ただし、納付金額に応じた決済手数料が発生するため、コストの考慮が必要です。さらに、利用できるカードブランドは限られている場合があるため、事前に対応可能なクレジットカードを確認しておきましょう。手続き自体はインターネットで簡単に完了するため、忙しい経営者や経理担当者にとって利便性の高い納付方法と言えます。手数料や上限額といった制約を理解したうえで利用すると良いでしょう。
電子納付やダイレクト納付の便利な仕組み
電子納付はインターネットを利用して銀行口座から直接納税する方法で、オンラインバンキングや国税庁のシステムを介して手続きが可能です。特に「ダイレクト納付」と呼ばれる仕組みでは、事前に金融機関の口座を登録しておくことで、e-Tax上で指定した納期限に口座から自動引き落としされます。納付手続きの手間を省けて、納付忘れのリスクも軽減されます。電子納付は24時間利用可能であり、金融機関の窓口営業時間に縛られない点も大きなメリットです。また、ペーパーレス化による経理効率の向上や納税履歴を電子的に一元管理できる点もポイント。
一方、システムの利用には事前準備として口座登録や電子証明書の取得が必要です。導入時には一定の手間がかかります。しかし、一度環境を整えてしまえば継続的にスムーズな納付が可能となり、長期的には業務効率化につながる便利な方法と言えるでしょう。
窓口納付や振替納税を利用する場合の流れ
法人税は従来の方法として、金融機関や税務署の窓口で現金または納付書を用いて納付も可能です。窓口納付は直接担当者に対応してもらえるため安心感があり、書類や手続きの不明点をその場で確認できるメリットがあります。
ただし、金融機関の営業時間内に出向く必要があるため、業務スケジュールに制約が生じます。振替納税では、指定した銀行口座から自動的に税額が引き落とされる仕組みがあります。事前に「預貯金口座振替依頼書」を提出すれば利用でき、納期限に自動で引き落とされるため、納付忘れを防げます。振替納税は手続きが比較的簡単で、中小企業にとっても使いやすい制度と言えます。ただし、残高不足があると未納扱いになるため、資金管理の徹底が必要です。窓口納付と振替納税はいずれも信頼性の高い方法であり、企業の事情に応じて使い分けることが可能です。
法人税を延滞した場合のペナルティと追徴課税
法人税を期限までに納付しなかった場合、追徴課税として加算税や延滞税といったペナルティが発生します。国税庁が定めるルールに基づいて計算され、納付の遅延期間が長くなるほど負担は大きくなります。申告期限までに申告を行わなかった場合には「無申告加算税」が課され、納期限までに税金を納めなければ「延滞税」が加算されます。延滞税は日割りで利息のように課されるため、少し遅れるだけでも余計なコストが発生してしまいます。
また、税額を過少に申告した場合には「過少申告加算税」が課されることもあります。法人税は企業にとって大きな金額になることが多いため、延滞による負担は資金繰りに深刻な影響を与えかねません。
さらに、繰り返し遅延や不適切な申告が続くと税務調査の対象となりやすく、信用面でもマイナス要素となります。そのため、法人税は正しい金額を期限内に納めることが、企業にとって最も効率的でリスクの少ない経営判断と言えます。
ここでは、法人税を延滞した場合のペナルティについて解説します。
法定納期限から二か月以内に納付した場合の扱い
法人税を法定納期限までに納付できなかった場合でも、2か月以内に納付すればペナルティは比較的軽く済みます。延滞税の計算において、納付が期限から2か月以内であれば「特例基準割合」と呼ばれる比較的低い利率が適用されるため、負担は限定的です。例えば、数日から数週間程度の遅れであれば、延滞税額は小さい割合に留まるケースもあります。資金繰りの都合などで一時的に納付が遅れる場合でも、できる限り早めに納付が重要です。
また、申告自体を期限内に行っている場合には「無申告加算税」のリスクは回避できるため、納付遅延に伴う追加負担は延滞税だけで済みます。2か月以内であっても延滞税は自動的に課されるため、余計な支出には変わりありません。期限から少しでも遅れると無駄なコストが発生するという意識を持ち、スケジュール管理の徹底が重要と言えます。
二か月を超えて遅れた場合に課される重いペナルティ
法人税の納付が法定納期限から2か月を超えて遅れた場合、延滞税の利率は大幅に上がります。「特例基準割合+7.3%」または「年14.6%」のいずれか低い方が適用される仕組みで、実質的には高金利水準となります。
また、申告自体を行っていない場合には「無申告加算税」も加わり、追徴負担はさらに増大します。税務署からの督促や強制徴収の対象になる可能性もあり、企業の信用や取引先との関係に悪影響を及ぼしかねません。2か月を超えての延滞は単なる遅れでは済まされず、経営リスクに直結します。どうしても納付が困難な場合でも、早めに税務署へ相談し、分割納付や納税猶予の制度を活用するなどの対応が必要です。
申告遅延が続くと青色申告の承認取消リスクがある
法人税の申告や納付が繰り返し遅れると、単なる延滞税や加算税の問題にとどまらず、青色申告の承認が取り消されるリスクも発生します。青色申告は、欠損金の繰越控除や特別償却などの数多くの税制優遇を受けられる制度であり、企業にとって大きなメリットがあります。
しかし、申告義務を怠り、期限内に適切な申告を行わない状態が続くと、税務署は「帳簿が適正に整備されていない」と判断し、青色申告の承認を取り消すことがあります。承認が取り消されると、欠損金を翌年度以降に繰り越せなくなり、税負担は大幅に増加します。資金繰りや利益計画に大きな悪影響を与えるため、企業経営にとって深刻なリスクです。
さらに、青色申告取消後に再度承認を得るには一定期間を要し、再申請も簡単ではありません。そのため、法人税の申告遅延は単なる罰金的な負担だけでなく、将来にわたる税務上の不利益を招く可能性があります。経営の安定を守るためにも、期限内の申告・納付の徹底が重要と言えるでしょう。